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「お前の翼は真っ白だな」
「お兄ちゃんのは真っ黒だね」
「いいか、目的は」
「大丈夫だってば」
月明りに照らされながら飛び立つ二つの陰。
それはかつて人類が目撃し、こう名付けた者たち。
「天」の「使」いと、「悪」の「魔」人
白い翼をもった者たちが、倒れている人を保護した際、人類は彼らがその人を天国に運んでくれていると思った。
黒い翼をもったものが、同様の行為をした際は、地獄へと誘うものだと思い込んだ。
翼の色に関係なく、彼等の目的は、人、獣、虫を問わずに、不幸な生き物たちを安住の地へいざなう事だった。
しかし、その色から、人類は勝手に決め込んだ。
白い翼をもつのが「天使」、黒い翼をもつものが「悪魔」と。
「いいか。もし万が一人類に見られるようなことがあったら、救いを求めて群がってくるから、それは無視しろよ」
「お兄ちゃんは大丈夫なの?」
「ああ、俺を見たものは、きっと恐れおののいて逃げ出すだろうからな」
「ボクもそっちの羽が良かったなぁ」
「色はその時々で変わるからな。次は黒い翼が生えるよう祈ってればいいさ」
満月に照らされながら、二人は翼を広げ、大空に飛び立った。
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