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屋上に出るとすでに野島が来ている。
いつも通り少し離れた日陰に腰を下ろすと、私は本を開いて読みはじめた。
高校に入学してすぐ、誰もいない読書できる場所を求めてきた屋上には、先客がいた。
どうしようか悩んだが、あちこち彷徨ってようやくたどり着いた場所だったので妥協した。
それに、眼鏡の彼の方も黙々と本を読んでいるだけだったし。
それ以来、晴れの日は毎日、屋上に出て本を読んでいる。
黙々と彼――野島とふたりで。
野島と私には屋上で本を読むとき以外に接点はない。
野島という名前も、同じ一年だと知ったのも、ただ単に何度かすれ違ったときに得た情報だ。
ちなみにうちの高校は、いまどき学ランに白タイのセーラーなので、制服だけでは学年を特定しづらい。
今日も太い黒縁眼鏡をかけて野島は黙々と本を読んでいる。
制服は少し前に夏服に替わり、梅雨入りした地方も出てきた。
昨日まで三日続いた雨は、梅雨の前哨戦といったところか。
本格的に梅雨に入れば、本を読む場所に困るのは必須だ。
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