春待ちの木々

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「木下はK社狙いな訳?」 「……そんなの林田に関係ないでしょ」  頬杖をついたまま視線だけをこちらに向けてきた。茶色の瞳がすうと細められる。 「まさかお前も森田なの?」  ねっとりとした半眼に私は視線を外した。 「林田でないことだけは確かね」 「…………ったくどいつもこいつも」  林田は大きなため息と共に、背もたれに寄りかかり天井を振り仰いだ。同時にデスクの内線が鳴る。私が受話器に手を伸ばすと、林田も立ち上がった。 「はい。二課、木下です」  林田は無言のまま、両手をポケットに突っ込んで去って行った。 (そんなに楽しみなのかしら?)  丸まったジャケットの背中を視界の端に見る。彼女が欲しいなら森田くんと一緒じゃない方が可能性があると思うんだけど、まあ余計なお世話よね。
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