春待ちの木々

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 森田勝之くん、私と同い年の同期。シュッとしたスリムな身体、長い脚に、細身のお洒落眼鏡がトレードマーク。綺麗に整った顔、キリリと吊り上がった瞳からは冷たい印象を受けるけれど、それが却って仕事のできそうな雰囲気を醸し出していて格好良い。  はっきり言ってモテる人だ。  あの派手な受付の緑川さんだって森田くん狙いだし、社外にもファンがいるらしい。今回のK社の子だってきっと森田くん狙いなんだと思う。そんな風にモテる彼だから、ひっきり無しに告白されているみたいだけれど、特定の(ひと)は作っていなかった。束縛されるのが嫌なんだって。 (余裕があるから言える台詞よね。でもだからこそ私にもチャンスがある訳で)  私も森田くんとお近付きになりたい一人だ。他の人に比べて「同期」っていうアドバンテージはあるけれど…… (でもそれだけ)  私は緑川さんみたいにガツガツ行くことはできない。でもだからってただぼーっと待っているだけで彼女になれるなんて思ってない。こんな機会にはちょっぴり勇気を出さなければいけないのだ。  例え休日に予定のない安全パイだと思われているのだとしても。
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