春待ちの木々

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 外は林田の言うように結構な雨だった。これは買い物に行かなくて良かったかもしれない。私たちは並んで傘を差し、駐車場に向かった。 「傘邪魔だろ。後ろに置いとけよ」 「ありがと」  後部座席の足下に傘を置き、黒いアクセラの助手席に収まった。車内はひんやりとしていて思わず肩を竦める。ブルルンと掛けられたエンジンに、ミラーにぶら下がったお守りが揺れた。 「お前、また森田と何かあったのか?」  運転席から呆れたような声が上がる。 「またじゃない。前の続き。終わってないの」  私は正面を見たまま唇を尖らせた。 「喧嘩してんの?」 「違うわ。一方的に喧嘩を売られてるところ」 「森田が? お前なんかしたのか?」  林田は森田君を疑わない。私はくるりとその横顔を見る。 (あんたの所為なんだけど)  喉まで出かかった言葉を飲み込み「別に」と返した。林田はふぅんと顎を突き出す。 「正直、森田みたいな頭良い奴って何考えてるか分からねぇよな」  私はうんと頷いた。 (林田のことを好きだなんて想像もできなかったし)  好きな相手のために仕事をして、好きな相手のために別の相手と付き合う。それが彼のステータス。  静かにワイパーが動き出し、カクンとサイドブレーキが下ろされた。 「じゃあ出る」  バックミラー越しに林田と目が合ってしまい、慌てて視線を反らす。シャアアと水を切る音と共に、車は駐車場を出た。
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