春待ちの木々

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 雨の所為もあってか道路は混んでいた。点々と続くテールランプの赤が、雨で黒光りするアスファルトに映り込んでいてちょっとだけ幻想的だ。  アクセラは大きな交差点で右折の車線に滑り込む。 「私の家、こっちじゃないけど?」  横顔に声を掛けた。林田は正面を向いたまま応える。 「ちょっと寄り道。良いだろ?」 「うん……」  送ってもらってるのはこっちだから強くは言えない。右折したところで林田がこちらを向いてきた。 「さっきは嬉しかった」  切り出された内容が分からなくて首を捻る。林田は人差し指で鼻の下を擦った。 「俺を、選んでくれたこと」 「えっ……」 (選んだって言われると……)  私は口籠もって俯く。 「それとも俺の勘違い?」 「勘違いじゃない! ……から……」  思わず大きな声を出してしまい、フェードアウト気味に言葉を濁した。林田は面白そうにきゅっとアヒル口を作った。 「そう。良かった」  林田はまた正面を向く。卒業がリクエストテーマだと言っていたラジオから『卒業写真』が流れてきた。
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