春待ちの木々

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「それでね…………」  話を続けようと横顔を見ると、眉間にシワを寄せ、口元に左こぶしを当てていた。私は首を捻る。 「どうしたの?」 「セーラー服の木下想像して、ヤバイ」 「何よ!! ヤバイって失礼……」 「可愛すぎる」 「!!!」  正面を向いたままの林田は、さらりととんでもないことを言った。予想外の台詞に顔中の血液が一気に沸騰する。勝手に想像して可愛すぎるとか、どんなに美化してくれたのか。  口を押さえたままの林田も、耳の縁が赤く色付いている。 「ばっ、馬鹿じゃないの!」 「可愛すぎるお前が悪い」 「っ!! んもう、ほんと馬鹿!」  私は視線を反らして正面を向いた。コートの膝の上で両手を握り締める。 (可愛すぎるとか……嬉しいけど、心臓に悪い)  だんだんと街から離れていく道路は、周囲の景色を暗い畑に変えていった。信号の数も減り、車はスムーズに流れ出す。  気付けばラジオは別の曲に変わっていた。 「この先に駐車場があるから」  林田が呟く。 「そこまで行こう」  私は「うん」と頷いた。
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