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真っ直ぐに続く並木道の途中、自動販売機が三台並ぶ広い駐車場にアクセラは滑り込んだ。運送業者の大きなトラックが一台、駐車場の奥に停まっている。
「俺、何か買ってくる。何が良い?」
シートベルトを外した林田が、自販機を指差して言った。
「えっと……じゃあ、あったかいココア」
「了解」
ニカと笑った林田はバタンとドアを閉め、バシャバシャと水音を立てながら傘も差さずに走って行った。ワイパーの止まったフロントガラスはあっという間に水膜が張り、林田の後ろ姿をぼんやりと滲ませる。
――可愛すぎるお前が悪い。
林田の台詞を思い出し両手で頬を押さえた。きゅっと引き攣れるような胸の痛みとは反対にふにゃりと緩む口元。熱い頬。
――俺、お前のこと好きなんだぜ。
――お前が来るの、待ってる。
次から次へと林田の声が脳内を駆け巡る。私の頭は林田に占拠されている。
ただの同期だったはずなのに、いつの間にかするりと入り込んだ林田は、それ以上の存在になってしまった。ただの声が特別な声に、ただの笑顔が特別の笑顔に。
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