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バタン!!!
大きな音を立て背中のドアが開けられた。
「きゃっ!」
悲鳴を上げ、弾けるように身体を離す。雨の音をバックに車の屋根に手を掛けるようにして覗き込んできたのは……
「森田!?」
「なんで!?」
コート姿の森田君だった。眼鏡のレンズに点々と雨粒が付いている。
「言ったよね。木下さん」
ドスの効いた低い声にヒッと息を呑んだ。林田が私の手を引き、運転席から身を乗り出すようにして森田君と対峙する。
「どうしたんだよ、森田。俺たちをつけてきたのか?」
流石の林田の声にも怒りが滲んでいた。覗き込む森田君は額に落ちる前髪を鬱陶しそうに掻き上げる。
「林田には関係ないから。ちょっと木下さん貸してくれる?」
森田君は口端を持ち上げて私の肩を掴んだ。足下にゴトンとペットボトルが落ちる。
「嫌っ!」
後ずさるように腰を引けば、レバーの並ぶコンソールパネルにお尻がぶつかった。
「止めろよ! 嫌がってんじゃねえか! 木下はものじゃねぇぞ」
私たちの間に身体を割り込ませるようにして声を荒げる林田に、森田君は私の肩を掴んだまま眼鏡を光らせた。
「うん、知ってる。ものじゃないよね」
「だったら!」
「害虫だもん」
森田君はニヤリと冷たい笑みを浮かべて、肩を掴む手に力を入れた。
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