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くい、と手首を引かれて二人の距離が縮まった。
「はや…………ん」
私の声を飲み込むようにして唇がそっと合わされる。一……二……三秒。
「…………」
長くながく感じられる時間を置いて、林田の唇が離れていった。ゆっくりとまぶたを持ち上げれば、獲物を狙う獣の瞳がすぐ目の前にある。
「木下……」
低い声が麻酔のように身体の自由を奪っていく。
私はもう一度瞳を閉じた。
優しいキスは雨の匂い。
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