銀鎖の茜は九十九に重なりて床に臥す

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一息に、目を固く瞑りながら呷る。喉にやや張り付くような感覚がしたが、飲み干した。 今日は一段と飲むまでのプロセスが長かった。だがすぐにいつもの感覚が襲ってきた。 微睡のような闇が這いずりながら、私に覆いかぶさってきた。                  ◇ 目が褪めた。 視界が何か可笑しい、可笑しいがそれを言語化する事は出来なかった。 体が直ぐに動かない。まるで神経(いと)と肉体(マネキン)が正しく接続されていない傀儡人形(マリオネット)のようだった。 だがそんなことでただ無意味にこの眩しい夕暮れを眺めている訳にはいかない。震えを抱えながらも体を起こす。 ここまで己の体がひ弱だったと思ったが、混濁した脳では何が正しくて何が正しくないのかも分からない。自分は何処だ?空が暗い、茜色で目に刺さる。苦しい。其処に誰か居るな。誰も居るはずがない。喉を掻き毟って痛い。無傷なのに。痛い、苦しい、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。 呑まなければ。 既に確定した縁によって結ばれている、この鉄の壺の中にある液体を私は呑むべきだ。誰に結ばされた?誰もやっていない。愚図が。愚かすぎて目も当てられない。 呑もう。     
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