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たった一人への『ひとつ』の難題
「ねぇ、御伽噺って好き?」
ある日の昼下がり、ほとんど人のいないカフェの一角でそう聞かれた
質問を投げかけてきたのは大学の先輩、二つ上の女性だ
染めたと思しきライトブラウンのセミロングとお洒落なストールが特徴の先輩は、頬に手をつきながらこちらを見つめ、柔らかく笑っていた
何処か意味有りげな台詞
そもそも突然すぎる話題に、しかし僕は特に驚きもしなかった
先輩はいつも唐突だ、やることなすことが行き当たりばったり
それでも憎めないのは、先輩の性格故か
「ねーねーどうなのー?」
暫く黙っていると、手元にあるカフェオレをスプーンで掻き回しながら二度目の問いを投げてきた
からんからんと鳴るコップの音が響く
僕は小さくため息を吐いた
「好きですよ、それがどうしたんです?」
何を意図したものなのか、それがわからなかった
だからこその素朴な疑問、その質問がいったいなんなのか?と
「んー、別に意味は特にないんだけどね?」
…………そらみたことか、行き当たりばったり
またもやため息をつくと、先輩はぷくーっと頬を膨らませた
「もー!また私が思いついたままに話してると思ったでしょー!」
「事実でしょう?」
「いつもはそうだけど今回はちょっと違うの!」
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