背後にはいつも影がある

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それに特になんの意味もない、ただそんなに話したのかと自分自身驚いたくらいだ なのに、何故だろうか 彼女がその数字を口にした時の顔が、歪な笑顔のように見えた 「それじゃ記念すべき百回目、行こうかな」 彼女は口を開く 「ある所に、何もかも悲観する平凡な男の人がおりました」 「彼は自分を何処にでも居る面白みの何も無い人間だと『思っていました』」 「そして彼は鬱屈とした中で特技を持つ人間に対し劣等感と嫉妬を覚えていました」 「ですが彼は気づいていなかったのです」 「そのあまりにも平凡普遍普通なその完全なるニュートラルが、如何に奇々怪界なものなのかということを」 「誰も口にはしません、だって普通のことをおかしいとは言えないから」 「誰にでも当てはまるニュートラルを、否定できる人間は周りにいませんでした」 「だから彼は気づかなかった」 「知らずの内に、怪を呼んでいたことに」 ぞわりと走る背筋の寒気 今ここにいてはまずいと、早く立ち去るべきだと そう分かっているのに、体が動かない 好奇心が、邪魔をする 「そしてついにその時が来ました」 「怪は理解者を求め、ついにそれにたどり着きました」 「自覚のない異質、それが今目の前にいる」 「暗闇に閉じた世界で、百の語りをする意味を、漸く気付いた」 不自然に外が暗い、いや     
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