背後にはいつも影がある

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『光が無い』 「そうして彼は、怪と永久の語りを続けていくのでした」 艶やかな声で締められた物語り それはまるで―――― 「まるで『僕の話』だ」 「……っ」 「センセ、百物語って知ってる?」 「……あぁ」 「うん、つまりはこういうこと」 彼女は不意に手をこちらに出してきた そこにあるのは蝋燭……の形をしたライトだった それをカチリと音を鳴らしながら消す 「これにて私とセンセの『百物語』はおしまい、センセは見事私と共になんでもない世界に誘われました」 「何を言って――――――」 「世界に悲観した?誰かを妬んだ?それをする自分に嫌気がさした?」 「ならそれはもうやめよ?私はセンセが好きだから、センセは世界が嫌いだから」 「……君は【誰】だ?」 「私は私、『直隠水紋』。ちょっと隠れるのが上手い引きこもり、そして異界へと誘う怪異」 「…………」 「ここから出る術はないよ、私もセンセも。だから続けよう?二人でずっと、物語りを」 僕の視線の先は暗い それは物理的にも、行く末的にも 知らず知らずのうちに僕は普通すぎて踏み外し、彼女と言う不可思議に見初められたのだろう 多分、世界から棄てられたのだ 異物は要らぬと、曜日毎のごみ捨てのように     
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