1 ひろってください

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 そうしてようやっと犬を迎えられる準備が整い店に電話すると、ちょうど桐乃のほうでも準備が出来たところだという。さっそく店に赴き、そして驚愕した。大きなケージ二つにシートのようなものが三つ、餌入れも二つに、ドッグフードは小さい袋のを三種類。犬を飼うにはこんなにも色々のものが必要なのだと、改めて思い知らされた。その分の会計もしっかり要求されたが、そこは余裕溢れる紳士然と、カードでお支払いしておいた。  とにもかくにもこうして子犬と佐古田の生活が始まったわけだが、最初の一週間は戦争であった。  まずは夜鳴き。なるべく一緒の部屋で寝ないほうがいいと言われて犬の住居はリビングにしたのだが、一人で眠るのが寂しいのかきゅんきゅんと鳴くのだ。煩くはないが居た堪れない。何度駆けよって抱き締めたいと思ったことか。しかしそれをしては絶対にいけないと釘を刺されていたので、枕に顔をぼすぼすと叩きつけることで何とか耐えた。  それから、予想してはいたのだがトイレの躾が大変だった。少しでも犬が催す素振りを見せればトイレ用のケージへ連れていき、もし間違ったところで粗相をしてしまったときは、痕跡を残さないように徹底的に消毒。そんな日々が続き、子犬の破壊的な愛くるしさと桐乃の助言がなければ、佐古田のほうが参っていたかもしれない。  しかし一週間もすれば慣れてきて、それからは毎日が楽しくなった。それから二カ月。こうして今でも佐古田は毎週金曜日になるとこのペットショップを訪れることになったのだ。
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