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2 おはなししましょう
今日も佐古田はペットショップを訪れる。少し急ぎ足で店に入ってくるや否や、爬虫類たちに餌をあげていた桐乃に携帯電話の画面を突きつけた。
「これを見てくれ」
仕事用とは別の、私用の携帯電話である。愛犬の画像を収めるために、画質にのみとことんこだわったものだ。待ち受け画面はもちろん愛犬のかわいらしい写真なのだが、今見せたいのはそれではない。データフォルダの中から最新の愛犬の写真を選んで表示させると、桐乃は大げさに両手をあげてリアクションをとった。
「あらぁ、目が真っ赤」
そう。二日ほど前から愛犬の目が充血して治らないのだ。すぐに病院に連れていこうかとも思ったが、もしかしたら大したことではないかもしれないし、へたな獣医に聞くよりも桐乃に聞くほうが確実なような気もしたからやめたのだった。胡散臭い上に馴れ馴れしくはあるが、この店員の動物を見る目だけは、佐古田も認めていた。
「どう思う、これ」
「目やにとかは?」
「ああ、すごい。毎朝拭いてやるんだが、それでも帰ったらビッシリついてる状態だ」
「うーん、大したことはないと思うけど、見てみないと分からないなぁ。ちょっとお宅におじゃましちゃダメですか?」
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