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待ち受け画面に設定されているのは、自分で撮ったのだろうと思われるシマリスの写真。これだけ動物が好きなのだから自分でも何か飼っているのだろうとは思っていたが、シマリスだったのか。少しピンボケしたシマリスは、カボチャの種を両手に抱えてきょとんとこちらを見ている。ああやはり動物はたまらない。
「かわいいな」
「前に飼ってたリスちゃん。寿命で、おととし逝っちゃいましたけど。名前は、ケイ、っていうんです」
ケイ。ヒトっぽい名前だ。桐乃もまた、想う人の名前をペットにつけているのだろうか。でなければこのタイミングで見せてくる意味が分からない。意図を測りかねる佐古田に、桐乃は少し寂しそうな顔で笑ってみせた。桐乃はいつだってへらへら笑っていたが、そのような笑い方を見たのは初めてだった。
「女の子じゃないですよ、『その人』は。慶太っていうんです」
ぴたり。ヨシユキの首をかいてあげていた手が止まる。
「すっごく好きなんですよー。リスの落ち着きのない様子とか、ほっぺたパンパンにしてるのとか、すっごい似てるんです」
愛しげに画面を指でなぞる。目尻をほんのり赤くして、いつものニヤけた顔ではなく、心底幸せそうににっこりと笑んで。だけれどきっとその想いは報われないのだろう。だから、ひっそりとペットにその名前をつけて、届けることのできない想いを乗せて名前を呼ぶのだ。その虚しさと切なさは、佐古田にも覚えがあった。
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