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「まだ高校生のいとこで、今は俺の家に居候してるんです。昔からずっと一緒にいるんですよー。俺よりもいくつも年下なんだけど、かわいくて、かっこいいんだー」
佐古田がそっと手を放すと、ヨシユキはとたとたと桐乃の元へいってその膝に鼻先をこすりつけた。それに気づいた桐乃がアハハと笑って耳の後ろを撫でてやると、くぅんと満足げに鼻が鳴る。
「佐古田さんはその人に、自分の気持ちを伝えるつもりはないんですか?」
「ないな」
「そっかぁ」
せつないね。ヨシユキの背に顔をうずめて、聞こえないように言おうと思ったのだろうか。その言葉はぼんやりとだが確実に佐古田の耳に届いた。佐古田の顔を見まいとする桐乃の意図するところがなんとなく察せられたのは、同じジレンマを抱える佐古田だからこそ気づけたのかもしれない。
きゅぅん、と一声鳴いて、ヨシユキがゆっくりと居間を出ていった。後に残されるのは、愚かな飼い主どもだけだった。
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