2人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな狂った戯言を笑顔で言うのだろうか?馬鹿げている。第一、彼女の親友は私だ。
いや…そう思っていたのは自分だけだったのだろうか?
考えれば、考える程、目に涙が浮かんでくる。友人はそれを見てあきれたような顔をして
「うわ~…マジ泣き~とか、ないわ~」
なんて呟き、視線をさまよわす。本当に“こんな対応”しかできない子が
友人と言えるのだろうか?
いや、親密になれば“食べられてしまう”この時代。
彼女が今の時代では正しい友人像なのかもしれない…
「あ、ようこじゃんー!おはよー!」
しずかを持て余した友人が教室の隅を指さし、馬鹿みたいに騒ぎ出す。その声に
クラス全員の視線が、隣のクラスの“綾瀬ようこ”に集まる。彼女はゆったりとした仕草で
皆に会釈し、教室内を進む。
周りに集まったしずかの友人も含めた女子達は、アイドルに群がる取り巻きのように、
ようこの進む道を先導し、
「ようこー、次はあたしを食べてよ。お願いっ!」
「何言ってんの?ようこと友喰いするのは私なんだから。」
と口々に騒ぎたてる。それを優しい笑顔で頷く、ようこは軽やかな声で
「考えておくわ。」
と答えていく。その答えに女子達は黄色い声で
「キャー」
と叫んで、気絶するフリをする始末。結局、彼女達にとって、友喰いは
“退屈な日常を変えてくれる超然的な何か”なのだ。
ひと昔前に流行った、コックリさんや占いと大差ない。
そして恐ろしいのは、彼女を一度は捕まえた警察…
いや、国家さえもが、彼女を認め、解放してしまった事で、
友喰いが…いや、ようこが社会お墨付きの“公式化”された存在になった事だ…
ふと気が付けば、件のようこが、自分の目の前に立っている。周りには
好奇の視線アリアリの野次馬が、ささめきながらも、極力静けさを保って、ようこから
発せられる“お言葉”を待っていた。
ようこの涼し気な目線を、睨み返すしずかに、彼女の声が響いてくる。
「あやかさんから“2番目”の親友だったと聞いているわ。しずかさん。だから、言わせてほしいの。その…ごちそう様」
両手を合わせ、仏の祈りのように目を閉じるようこ。取り巻き達が素早く反応し、合唱する。
「ごちそう様~」
クラス内に響き渡る声に、しずかの怒りが頂点に達する。無言で立ちあがり、
微笑みを絶やさない、ようこの頬を勢いよく張る。
最初のコメントを投稿しよう!