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両足を屋根にかけ、逆さにぶら下がっている。髪は箒のように伸び切り、両手を組んで
こちらに微笑む。
しずかの部屋は二階。足場は何もない。だから、ぶら下がるしかないと言えるが、
そもそも、人の屋根にぶら下がるのは異常だ。
当たり前の自答に余計に恐怖が増した。そんなしずかを見て、
最早“人間には見えない”ようこは、ゆったりとした仕草で、こちらに手を振ってくる。
自身の体が震えだし、少しづつ後ずさりを始めていく。このまま外に飛び出したい。
だが、彼女に背中を見せて、鍵を開けている内に、部屋の中に、ようこが入ってきたら、
どうする?…
考えただけでも恐ろしい。
ふいに手元で鳴った着信音に飛び上がった。ようこの方を見れば携帯を耳に当てている。
嫌な予感を押し殺し、通話ボタンを押す。響いてきた声は予想通りのモノだった。
それも最悪の…
「次は貴方を食べる(とても可愛く、無邪気な笑顔で)」
そこまでが限界だった。しずかは絶叫を上げ、ドアの鍵を開けると、一気に階段を駆け下り、
ようこがいた窓とは反対の方角に、逃げ出した…
夜の街に飛び出した、しずかは恐怖に混乱しながらも、携帯と財布を忘れなかった自分を褒めてやりたかった。問題は何処へ逃げるかである。
暗い場所は怖い。今にも、ようこが背中に覆いかぶさってきそうな
錯覚に囚われそうだ。
一瞬考えた後、亡くなったあやかの友達で、自分とも交流のあった友人を思い出す。
携帯の“ライン”を見る。名前の登録があった事に一安心。学校は違うが、
住んでいる町は隣町…
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