サンキチ~既知外者(きちがいしゃ)の流儀~

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少女はこちらの視線に気づかず、全くの無関心といった感じで横をすれ違い、 通り過ぎていく。それを見送り、俺は一言、呟いた。 「随分、食ってるな…」…  「鈴木主任、また“友喰い”です。」 若い警官が走りこむように、“鈴木”の仕事場である“友喰い対策捜査本部”の部屋に 飛び込んでくる。 「また、起きちまったかぃ…」 顔を歪ませ(報告した男も同じ表情だった)手渡されたメモリースティックを自身の パソコンに差し込む。程なくして画面に映像が現れ、内容の詳細が現れる (2時間前に動画サイトにアップされたモノとの事だ。) 「嫌な時代になったもんだ…」 そう思っても指は自然に動く。再生ボタンを押すと、画面の中に“友喰い”という 文字が丁寧な書体で現れ、いつ聞いても絶対に覚えたくないフレーズの歌… 「貴方の事がだ~い好き~。好~きで好~きでたまらな~い。だ~から、食べよう。 そ~しよう~。み~んな一緒のと~もぐ~い(友喰い)」 が流れ… 暗い一室と豪華なクロスに彩られたテーブルが映し出されていく。 そこに並べられた銀食器の皿に乗るのは、若い女性の首、手、足、胴体が 丁寧に切り分けられ、置かれている。もうここまで見れば、 この後何が行われるかは明白だろう。 (まだ、高校生?それとも中学生か?あんなに若い子が…) 少女の遺体の前に、目元のみをマスクで覆う同年代な見た目の女性が ナイフとフォークを持って現れた。最悪の瞬間が始まる… 表示されているタイムラインを見れば、この映像は後15分も続く。 鈴木は吐き気を催す腹を賢明に抑え、画面を見つめる。 そんな彼の気持ちに関係なく、覆面の少女は喋り出す。 「今宵の友喰いに選ばれたのは、柏葉あやかさん(かしわば あやか)私と同じ高校に 通う女の子です。彼女はスポーツ抜群。明るい性格が素敵な私の大親友です。 とっても愛おしい存在、それは、もう食べちゃいたいぐらいに!だから食べます。 あやちゃん…一つになろうね。」
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