1 決意の確認 前編

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白を基調とした教室。教卓の後ろには壁一面のホワイトボード。大理石模様のプレートで引き詰められた床。そして茜色の陽が差し込み、長く伸びた3つの人影。その内の2人からリズム良く、小さく、でも激しく…金属と金属がぶつかる音、鋏の開閉時の音が等間隔で良く鳴り響いていた。 「2人とも残り20分だよー。」 「ありがとうございます。」 「ざいまーすっ!よっしゃ!めっちゃ良い感じ!今日でお前の連勝止めてやっかんな!」 タイマー管理から残り時間が告げられた。 美容師のマナーとして報告があるとお礼を言うのが美容師の世界では常識なのである。 その言葉を言い終え、2人は黙々とウィッグ(頭だけの人形)の髪に向かって右手に持つ銀色に輝く鋏を入れ続ける。 今行われているのはフリーカットバトル。 そしてカットバトルの基本は… ウィッグ(人形)全6種類から髪質、毛量、顔の形が違うウィッグなどからの人形を使い、感性、発想力、独創性、創造性、技術、人形への似合わせ、タイム内のルールでカットからスタイリングまで行い、どちらのウィッグが素晴らしいか評価するものである。 「2人ともまた感性出してるねー。流リュウはそれアシンメトリーにしてるのか?」 タイマー管理をし、机に寄りかかり、前髪が上がった栗色の短髪、須堂 恵(スドウ ケイ)が金髪の長い髪を後ろで結ぶ千場 流(センジョウ リュウ)にそう言葉を掛けた。 「おうよッ!!感差が出て良い感じだろっ!?」 千場 流は勝機が近いと思ったのか余裕ある表情に口角が上がり笑みは絶えない。 とても楽しそうだった。 そしてその横でカットしてる人物、千場 流のバトルの相手は、深い黒の髪色に目元まで伸びた前髪、決して短いとは言えないヘアースタイルに背丈はそこまで高くなく、全体的に小柄な、神鳥 切(コウドリ セツ)が千場 流のカットしているウィッグのスタイルを確認する。 『アシンメトリーか…流の奴さすがに魅力あるスタイル作ってきたな…。まぁ。だから勝負挑んできただろうけど。…なるほどね。』 事の発端はバトルをする数分前にさかのぼる。
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