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頭頂部から鎖骨まである髪の長さに対し、その真ん中の耳下に位置する場所。
そこを右手に持った鋏を安定させる為、左手で支え、一寸のブレる事無く慎重に切る。
そして、表面厚さ3㎝だけをバッサリと落としたのだ。
「え?すごい所に段を入れたな?もうどんなスタイルになるか俺でも想像つかねーわ!」
タイマー管理の須堂 恵がそう言うのも無理はない。
神鳥 切は、長めで切っていて鎖骨ぐらいまであった表面の髪を唇の高さで切るという残り時間に間に合わないようなスタイルチェンジを開始したからだ。
「チッ!勝負決めに来やがったな!」
千場 流が吠える。だが、神鳥 切はもう何も聞こえていない。
自分しかいない真っ白い空間にいる感覚。
その中心で1人、ウィッグを切っている感覚。
まるで自分を外から操作してる感覚。
きっとここは精神の世界であり、集中の世界であり、そして自分の世界なのだろう。
意識が研ぎ澄まされ、髪の毛一本一本が鮮明に見える。
その一本一本が右手に持つ銀色の刃に触れ、下にゆっくり落ちていく。
残り時間は20分をきってる。
神鳥 切はその世界で1つ1つ行程を進めていく。
『正確に、一寸の狂いなく、そして速く…もっと速く…最大のスピードで、そして一切のミス無く慎重に。
スタイルチェンジをした分、もうコテで巻くことは出来ない。ブラシとドライヤーでブローをし、ツヤと質感を…重みの丸みフォルム(形)を大きく出し、形成。スタイルを作った状態で最後はドライカット…。そしてここのラインを繋げるっ!!』
「終わりましたー!審査お願いしますッ!」
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