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苛立ちが頭の中で沸騰してる中、タイミング悪く話しかけられた。突然のことで、不機嫌な声が漏れる。見れば、俺の席の前で、スっとかがんでいる人物のようだ。床に落ちたものを拾い上げると、俺の顔と交互に見比べている。
まて、見比べるって前に、コイツ誰だ…?
うちのクラスじゃ見たことない顔だ。
「あ、ごめん。僕は昨日転校してきたんだ。たしか、君は休みだった、よね?」
「あーなるほどな。ワリ、それ俺のだわサンキュな」
転校生が女子ならまだしも男はなー。これが女子ならまだもうちょっと変わってたかもしんねーけどなぁ。
転校生は身長も鼻も高く、すっきりした顔立ちをしていた。女子にモテそうな感じの。
はーなおさらてんこーせーきょーみねーやー。
「こ、これ…。音色匣シリーズ、だよね?」
「あ?そうらしいな。」
「驚いたなぁ、こんなの始めて見たよ。」
「…そうかよ。」
「そうだよ。そもそも匣じたいなかなか手に入らないし、それにこれ…」
「別に。どうでもいいだろ。」
乱雑にソレを取り上げると、俺は教室から出た。急だったせいか残された転校生が唖然としているのが去りながら分かる。
…しゃ、しゃーねーだろ。なんかいろいろ思い出しちまったんだから。
握りしめた〝音色の匣〟
そいつの本当の持ち主、それは…。
あの嫌な耳鳴りは鳴り止まない。一段とガマンできない。
くっそ、なんとも憎らしい。
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