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現場報告
家に帰った吾輩を、兄は神妙な顔で出迎える。
「ご主人、どうだった?」
俺は溜息交じりに言った。
「叶わぬ恋をしていた……」
「相手は?」
「サッカー部のイケメン」
「あちゃー」
兄は溜息を返す。
「ずっとグラウンドにへばり付いて見てたよ! 呪う勢いで!」
兄は腕を組んで考え込む。
「でもさ、あの腐った唯ちゃんが、泥を落とす気になったんだぜ?」
「落ちねーよ骨まで染みてんだから」
「そう言うな。お前彼女がちょっとでも恋愛体験が出来るように協力してやれや。奇跡が起こるかもしれない」
「えー」
「男を知らぬまま生を終えたら可哀想だろ?」
「大げさ……そうでもねーか」
吾輩は仕方なく主人に少し協力する事にした。
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