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秋の風はひんやりと頬を撫で、歩道に落ちたオレンジ色の葉を揺らす。
私は体から熱を逃がすまいと、コートの衿を立てて歩のスピードを速めた。
駅から10分。
周りには似たような古びたアパートが建ち並ぶ。その中の一つ、くすんだ白色の壁を目指し、カンカン音を鳴らしながら階段を上っていく。
換気扇がごおごおと喧しく回りながら、廊下にカレーの匂いをばらまいていた。
「弦さん!ただいま」
ピッキング対策のまるで為されていない鍵を差し込みノブを回した先には、ワイシャツ姿の一人の男性。
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