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「本当に、お待たせしました…」 「全然」 にこりと微笑む弦さんは着替えるのが面倒だったのか、この季節から冬を越すまで大活躍するもこもこのフリースを羽織っている。 台所と居間が兼用の狭いスペースに置かれたテーブルには、カレーライスとサラダ、スープが給食のようにきちんと配膳されていた。 「いただきます」 手を合わせてからスプーンを口に運ぶ。 甘過ぎず辛過ぎない。弦さんの作るカレーは私の舌を安心させる。 「うん、美味しい!」 「市販のルーだけどね。しかも特売品」 「いや、全然美味しいよ。ん?これって文法的に変?」 大きめに切られた野菜を追い掛けながら私は弦さんへ目を向ける。 「伝わったから大丈夫」 「そもそも、母さんはご飯を作ること自体しなかったからね」 「そういえば、僕も里奈(りな)さんの手料理食べたことないや」 「…恋人にも作ってあげなかったなら、面倒だからとかじゃないよね」 「きっと相当」 「まっずいんだよ」 重なった声に、思わず二人で吹き出した。
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