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冬を待つ風は完全とは言えない半端な冷たさを纏っている。 靴の上を枯葉がするりと滑って、僕の帰る方向へと舞っていく。 駅から10分掛からない、静かな住宅街。 その内の一つの、色褪せた白色を目指す。 住人の出発と帰宅を随時報せる階段を上って、作りの甘い鍵を差し込みノブを回す。 台所を通り抜けて、二手に分かれた部屋の襖を開ける。 鞄を畳の上に、コートとジャケットはハンガーに吊し、ベランダに出て煙草に火を点ける。 禁煙しようと思っているのに、一人の時はつい手が伸びてしまう。 あの子と一緒の時は、そんな気持ちにならないのに。 腕捲りをしながら台所へ戻り、夕飯の支度を始める。 才能があるかは定かでないが料理をするのは嫌いじゃない。 特に野菜を切るのは無心になれるから好ましい。 皮を剥き終えたジャガイモや人参は予定より大分多い気がしたが、構わず鍋に投入する。 誰が見てもそれと分かる夕飯が完成する頃には、聞き慣れたリズムの音が耳に届く。
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