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ライは小柄で凛とした黒い雄子猫だった。反対に、真っ白で目立つトーはライが憧れだった。トーの口癖は、「幸せになってゴハンいっぱい食べるんだ!」と、子猫のそれらしかった。そんなトーがライは大好きだった。
今日も、暖かい春の陽の昼下がり、"いつもの"約束をした。
「でもさ?幸せってどんなことだろう?」
トーの問いにライは
「なんにも心配ない、のんきで、好きな人といることだと思う」
と答えた。
ふふっとトーは笑って、
「でもライは狩りが失敗しなくなって強くなるのが夢なんでしょ?のんきなの、それ」
いいの、と言おうとした瞬間、空が陰った。
「カラスだ!」
ライは逃げようとしたがトーは立ちすくんでしまっている。
逃げられない!
そう思ったライはトーに覆い被さり、一撃を食らった。その反動で一回転したライは遠心力を使ってカラスに鋭い爪をお見舞いした。
カラスは痛くて、ビックリして逃げていった。
「ライ、大丈夫?!」
「大丈夫。傷は深いけど、なんとかなるよ。」
「どうしよう、私のせいで…」
「トー、落ち着いて。傷の治りがよくなるように、食べ物をとってきて欲しい」
「なんでもいい?」
「勿論」
その返事を聞くかどうかでトーは走り出した。ライはその背中を見送り、その場を後にした。この傷では生きていくのにトーに迷惑をかけてしまう、その一心からだった。
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