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家猫と外猫
トーは無我夢中だった。私のせいで、ライが大ケガをしてしまった。痛かったろうに、辛かったろうにー。
走り疲れてきたころ、ふと足を止めた。
この匂いは?
今まで嗅いだことの無い、美味しそうなにおいだった。これならライも!茂みを分けてくと、そこにあったのはみずみずしく艶々した見たことの無いものだった。どう持ってかえるべきか。そう悩んでいた瞬間、今度は体が持ち上がる感覚がした。えっ?!何?!
「お母さん!可愛い子猫来たよ!」
「猫が多いって聞いてたけど、本当に来るのねぇ」
「ねえこの子飼って良いでしょ!約束でしょ!」
「子猫だし…あんたが世話するのよ、千恵」
「やったぁ~!」
「にゃーん…」
悲しげにライを呼ぶ声は歓声に書き消された。
それからトーは、家に連れていかれ、はじめてのシャンプーを体験し、ドライヤーの強風にもてあそばれ、美味しいゴハンを毎日もらうことになった。そう、小さい頃の口癖、「幸せになって美味しいゴハンをいっぱい食べるんだ!」が奇しくも叶ったのであった。しあわせな毎日は、大人になるにつれ、子猫の頃の記憶を消していった。
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