0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
再会
ある日、飼い主が洗濯物を干しに庭へ出た。ゴハンと名付けられたトーも後を追って初めて家を出た。外の匂いは爽やかで、乾燥していて、なぜか懐かしかった。家の角を曲がると、茂みと目があった。ビックリしてよく見ると、すらりとした雄猫がいた。
猫に慣れていないゴハンは焦って引き返そうとした。
「トー?」
話しかけられてしまった!もう逃げられない!
黒猫はすらりと近寄り、匂いを確認する。シャンプーと人の香りの中に、トーを見つけた。
「トー!生きていたんだね!」
はしゃぐ黒猫にゴハンは
「トーって誰?私はゴハンです。初めて会ったのに馴れ馴れしい!」
ピシャリと言い渡す。フッと耳を伏せたライは
「それは失礼。昔馴染みににていたもので。よければお話ししませんか?」
それからゴハンは、こっそり家を抜け出しライと言う雄猫と話をするようになった。ライは野性的なのに、心が落ち着く。不思議な感覚だった。
今日も話に花が咲く。夕方の帰り道、ゴハンは振り返って明日も来ていいか聞こうとした。その時。空を黒い影が走った。ゴハンは何が起きたかわからなかった。と、ライが体当たり同然で突っ込んできた。
「逃げろ、カラスだ!」
ライはカラスと戦う。しかし、相手も引かない。
目の前の光景に、じわじわ焦りがせり上がってきたゴハンは、日頃食べ蓄えた大きいからだでカラスに体当たりした。カラスは見事撥ね飛ばされていった。ライを見る。背中を怪我している。
「ライ、大丈夫?!どうしよう、そう、そうだ!食べ物を持ってこなきゃ…?」
ゴハンは自分がトーだと自覚した。
「ゴハン…?怪我は…?」
「ライ…ごめん…ごめんね…」
本当はライが家の前にいたのも、偶然じゃなかった。"大好きなトー"を、見守って。
「私はトーだよ、ライ」
ライは笑顔だった。
「トー、会えて嬉しい」
ライは呼吸をやめた。
トーはしばらく家に帰る気にならなかった。
最初のコメントを投稿しよう!