「酒豪」

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「おおぉ...何とも見事な...」 黒漆塗大水牛脇立桃形兜 その姿はまさに芸術品 酔っ払った家来の酔いも覚めるほどの美しさ。 桃形兜という作りの兜の正面には金色の日輪が塗られ黒漆とのコントラストが実に美しい。 そしてこの兜の最大の魅力はなんと言ってもその大きな脇立ての角。 その大きさに反していくつかの木製のパーツを組み合わせ下地を塗った後金箔で塗装されているので軽量化と迫力を最大限に発揮している。 その角もただ大きく伸びているのではなく絶妙なカーブを描きながら本物の牛の角の如き曲線を描いている。 「これよこれよ!松寿の奴は気に入らんがこの兜だけは前々から羨ましいと思っとたっじゃ!!どうじゃ似合うか?」 早速その兜を被り配下や遊女に自慢して回る。本当に子供じみた男である。 「よし!ではこちらも 兜を持ていっ!」 運ばれてきた兜の名は「銀箔押一ノ谷形兜」 「見事!実に美しい。」 この下品な男の所持物とは思えぬ程の気品溢れる兜である。 まず目を引くのはなんと言ってもその形。 頭頂部に板状の造形物を自然な曲線で溶接され板の頂点は前方に曲がり 源義経が逆落しを駆けた一ノ谷鵯越がモチーフとなっている。 そして色は総銀泥塗。決して悪趣味にならず気品溢れる光を放つこの兜。 長政が現在着用する「黒皺皮包五枚胴具足」とまるで最初から合わせて作られたかのようにピッタリの色合いと形(なり)これを付け戦場を駆ける主君の姿が目に浮かぶようであった。 その後書状に花押を書くなど細々とした手続きを済ませさっさと帰ろうとする黒田家御一行の呼び止める正則。 「何をそんなに急いでおる?今日は福島 黒田の蟠りが解けためでたき日ぞ!馳走に酒 女 存分に堪能していきなされ!のぅ!」 馴れ馴れしく肩を組み酒臭い息を吹き掛け無理やり二人を再び座らせ膳を運ばせる。 「ささっ!グイッとやられよ!」 「いえっ拙者は下戸でして...」 「儂の酒が飲めぬと申すか!」 上機嫌が突如豹変し無理やり飲ませる正則。太兵衛の目付け役がほんの少しだけ飲んだだけで酩酊してしいまた家来一同で大笑い! 「なんと情けない!これぐらいおなごでも飲めるぞ!なぁ!?」 そう言って酒を口に含むと遊女を抱き寄せ口移しで酒を飲ませる趣味の悪さを見せつける。 「さぁ太兵衛殿も一献!!」 太兵衛に出されたは特大の升 思わず舌なめずりする太兵衛であった。
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