79人が本棚に入れています
本棚に追加
「此奴...化け物か...」
目の前の光景が信じられない家来衆は空いた口が塞がらずすっかり酔いも覚めた。
飲み出した太兵衛はもう止まらない。
部屋にあった酒をあっという間に飲み干しそれだけでは飽き足らず給仕の女子を捕まえ酒蔵に案内させそこから七升は入る瓶を持ち前の怪力で担いできてそこに頭を突っ込み直接飲み出した。
ガボッガボッ!ガボッ!
瓶が少なくなるとまたも腕力で瓶を持ち上げ浴びるように酒を体内に注ぎ込み遂に瓶ひとつ空にしてしまった。
流石の太兵衛も呂律が回らない。それでも迫力満点で家来衆に詰め寄る。
「こりぇでいかがか?ふくひぃまどにょ!これでもまだ下戸のやひゃおとこか?んん?」
酔いでこの家来が正則だと勘違いしているがお構い無しに褒美の貰おうとする。
「ありぇがよォござる!帝!しょうぐん!のょぶながこう!そして太閤様へと時の権力者がもち 太閤様よりふくひぃまどにょが賜った名槍 日本号!!」
「バカを申すな酔っ払い!あれは福島の豊臣の日ノ本の宝ぞ!」
日本号とは天に比類なき名槍 槍を嗜む武者にとっては正に神に等しき槍である。
ひと振りで城が何軒も立てられる未曾有の価値のある物をこんな酒飲み遊びで手放す訳には行かない。
騒ぎ出す家来衆を今度は戦場以上の大声で一喝する!
「だまれぃ!二言吐くは福島の家訓か!?正則殿は何でもと言うたのじゃ!飲みすぎで忘れたとは言わせぬ!!」
「大体これまでの無礼の数々!主君への侮辱!お家への暴言!たとえ日本号もろうても足りぬくらいじゃ!!それを槍一本で勘弁してやるのだと申しておるのじゃ!ありがたく思え!」
「ふざけたまねを!切る!」
1人が脇差を抜いてしまい一触即発!
「やめいっ!!!」
そこに響く正則の雷音声が響く。腑抜けた赤ら顔は消え去り敵を畏怖させる猛将の顔になっていた。
「見事!!!真に見事!!こんなに豪快に飲み主君に忠義厚き忠臣をもち松寿丸...いや長政殿は幸せじゃのう!」
「これまでの無礼どうか御容赦を!日本号遠慮なく持っていってくだされ!」
「殿っ!太閤殿下になんと申開きを...」
「それがどうした!ここは儂の屋敷でやる事にはたとえ太閤であっても関係ない!」
そう家来を黙らせ自ら壁にかけてあった天下無双の槍 日本号をとり太兵衛に授ける。
最初のコメントを投稿しよう!