「歴戦」

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「上田宗箇殿 御帰陣!!!」 浅野家の伝令が歴戦の戦士の帰還を高らかに伝える。 その手には敵の主力 塙団右衛門の首級を下げている。 この樫井の戦いの最大の殊勲賞は間違いなく上田宗箇である。 自ら戦塵に塗れ命懸けで生き抜いた男の姿にぐうの音も出ない他の家臣達。 「ふっ...諸士らの働きはこの茶の湯法師にも劣られたか...」 珍しく皮肉を吐く宗箇。それに反論出来ない家臣達。 しかしそれの激に長晟は大いに笑う! 「ははは!流石は上田宗箇!見事な働きぶり!!各々方も茶の湯法師に遅れを取らぬように一層奮起せねばのぉ!!」 かつての長晟ならその言葉を吐いても家臣には響かず反感を買うだけだが戦の最中終始威風堂々とした大将ぶりを見せた彼のその言葉にはかつてない力が宿っている! 「そうだぁ!」「豊臣軍何するものぞ!!」 当主の言葉に士気の上がる浅野軍!皆の心が固まり大きな力となる。 長晟の成長が軍全体に広がり戦に慣れぬ世代までもが大いに力を発揮する! その逞しくなった当主を見て安堵する宗箇。 「そうです長晟様。貴殿はこの家の心 強くなられませ...あなたが皆を支えるのです。さすれば皆もあなたを支えてくれましょう。強く 強くなられませよ... 」 その後 各軍の猛攻により大阪城は落城。 遂に長きに渡る戦国時代が終わりを告げた。 その後長晟は47歳で無くなるまで領地の安寧に尽力し次男に家督を繋ぎ当主としての責務を全うした。 上田宗箇はと言うとなんと88歳まで生きながらえ 数々の庭や茶器 作法 美を生み出し続けた。 それら全てに共通するのは美しさの裏に確かに感じるゴツゴツとした武人の気骨。奥底から湧き上がる熱い血潮と力強さ。 戦無き世に その平和を作る為に死んで行った男達の息遣いを伝える様な作品の数々は今も尚人々を魅力している。 完
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