「失策」

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武田と上杉が激突間近! この報に日ノ本が揺れた。 当代きっての名将 武田信玄 領土拡大の為 隣国信濃に侵攻! 甲斐の国は貧しく小さい。武田軍は生きる為に 明日の糧を得るために戦うしかない。 ヒリつく様な飢餓感。戦い続けなければ生きて行けぬ飢えた虎が甲斐の武田なのだ。 次々と落ちる城 武田に滅ぼされる豪族 武田に与する豪族入り乱れる中 最後に立ちはだかったのは信濃の猛者 村上義清 かつては上田原の戦いで 居城 砥石城で武田を退けた村上だったが次第に押し切られ遂に城を捨て落ち延び故郷を追われることとなった。 しかし村上勢は故郷奪還に燃え、ある男に助力を願った。 その男の名は上杉政虎 後の上杉謙信である。 本来の越後守護であった上杉家は既に凋落の一途を辿り越後守護職の実権はこの若き軍神 上杉政虎が握っていた。 この政虎と言う人物 比喩ではなく本当に変人である。 厳格な仏教徒であるが仏門で禁じられている酒を愛し戦を好む。 山も海もあり広大な国土の豊かな越後を持つにも関わらず毎年の様に北条領に攻め込んでイナゴの様に荒らし回る。 その土地を奪い統治するなら北条も取り返す事が可能だが政虎はただ戦って冬になると去るのでただ国土を踏み荒らされるだけなのである。北条にとってはいい迷惑だ。 後年は「義第一」を掲げ義の武将として慕われるが その軍は平気で乱取り(足軽などの略奪)を推奨し上杉軍の後ろには奴隷市が出来ると言われる程だ。 苛烈にして残忍の様に思われる織田軍の方がよほど民に優しい軍団である。 そして仏門の教えを固く守って妻を娶らなかったが代わりに見目麗しい美少年の小姓を数多く侍らせていた。小姓の仕事の中には夜の伽も含まれる場合もある。 何が言いたいかと言うとつまり上杉政虎と言う男は何一つ禁欲などせず、酒を愛し 人殺しの最たる戦を楽しみ 美少年と夜な夜な交わっていたのだ。 数を上げれば枚挙に暇が無いが兎に角、上杉政虎と言う人物は戦国の常識でも現代の常識でも計れない奇人 変人 超人である事に変わりはない。 そしてその神がかった軍略もまた常識外れ。 まさに雲に乗り心の赴くまま気の向くまま必要の無い戦を 純粋に命をかけて戦う戦を楽しむ天を翔る龍。 戦国を代表する虎と龍がここ信濃 川中島で睨み合っている。
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