壮年期

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壮年期

すっかり大人になった猫は、猫らしい仕事をするようになった。ネズミや小鳥などを捕まえてくるのだ。僕がいないと家の中で死骸が転がっている。仕方なくその死骸を外へ放り出してカラスの餌にしている。 僕が食べ終わった皿を舌で舐めるのも日課になった。洗剤をあまり使わなくて助かるが、床には猫の毛が落ちている。それを粘着テープで取り除くのは僕の仕事だ。 もう一つ重要な仕事がある。それは、SNSに投稿するモデルである。お世辞にも美男子とは言えない僕に代わって映り、それを写真アプリに投稿して本にするのだ。しかも、猫の写真からスタンプやアクセサリーなどを作ってそれをフリマに出すのだ。 僕のパソコンやスマートフォンのフォルダには猫の写真が溜まった。どうせ撮るなら、猫の方がいい。何回も整形手術が必要な僕よりも猫の方がモデルとして即戦力になり、会社で貰う給料よりも収入が上がった。 元々女の子からはモテない僕には、猫が恋人となった。オス猫でも、僕には良いパートナーである。 しかし、猫には猫の世界がある。睾丸を取り除いたとはいえ、オスとしての本能が残っている。メス猫を追いかけたり、他のオス猫と喧嘩をする。     
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