壮年期

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春になると外で猫が鳴き始めた。酔っ払いのおじさんが罵り合いをするかのようなダミ声が聞こえてくる。あまりにもうるさいので、僕が外へ出るとそこで喧嘩が終わる。それもほんの一時で、また他の所で喧嘩を再開する。僕は二重窓やカーテンを閉めて寝ることにした。 春が過ぎて初夏が来た。今度は蝉が鳴き始めた。夜になっても照明が点灯してる所で大合唱する。餌を買いに行くホームセンターの一角で、また子猫がケージの中でウロウロしている。今はそんな余裕がないので無視して外へ出る。僕は、エアコンが効いた部屋で猫と団欒を取り、カーテンを閉めて寝た。 期限が切れるとワクチンやノミ取り剤を施して月日が流れていく。遊びたい盛りの子猫はいつのまにかオッサンとなっている。僕よりもオヤジ度が高い猫は、すっかり僕を尻に敷いている。会社でも家でも上に仕える僕には上司が一人増えたようなものである。人間だと憎らしいが、猫だから憎めない。僕は、騙されたフリして猫の言う事聞いてから寝るのだ。 不細工な僕は人間の家族を持てなかったが、こうして猫をパートナーにして家族を持てたのだ。今日も喉でゴロゴロ鳴く猫の声を子守唄にして夢を見るのである。
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