推しは宇宙人じゃありません ～アスペルガーと診断された夫と、手をつないで生きてく私の話～

つらつらと振り返れば

私には鮮烈な印象を残しているその出来事を、
彼は今、ほとんど覚えていないそうだ。
ときたま思い出話を蒸し返しても、
さも他人事のように「それは酷いな」なんて言っている。

旅行先で何かあったのか、なかったのか。
それはたぶん、永遠に分からないと思う。
でも彼曰く「何もなさすぎた」ことだけは確かなのだそうだ。
そのせいで元カノさんが烈火のごとく怒っていたため、覚えているのだという。

――そりゃ、怒るだろう。