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俺は、とどめ、と言わんばかりにベッドを囲むように設置されているカーテンを閉め、キンパツに歩み寄る。何かを期待している顔を無視し、ベッドから枕を抜き取り、そのままキンパツを寝かしつけると、力を込めて枕を顔に押し付けた。ただの患者に心電図がついているわけもなく、誰かに気づかれることはない。
キンパツの腕や足が暴れ、俺に掴みかかろうとしてくるが、ひょいひょいと軽くかわす。何かを喚いているようだが、枕のせいで声がくぐもって聞こえない。十秒、二十秒、三十秒、と時間を数える。
そろそろかな、と枕を離す。
ぜーぜーと息を切らして顔を真っ赤にし、情けなく涙と鼻水を流しているキンパツの顔があった。
「一つだけ、助かる方法がある。俺は、その寄生虫を殺すワクチンを持っている」
黙って俺を見ているキンパツには、もう抵抗する気配がない。生きていることの方が不思議だ、と思っているような気配すらある。これで、安心だ。
「お前らにワクチンをやる。だが、監視は続ける。この病院には、俺の仕事仲間が偶然入院していてな、そいつはお前のことを、疎ましく思っている節がある。静かなのが好きな奴なんだ。お前が、少しでも目障りな行動をとれば、容赦なく次は消す。わかるな?」
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