2 蜂とレショパニーズ

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 バレていたのか? 情報では入院し、ここにいるはずだったが、移動したのだろうか。  が、そうではなかったようだ。 「三田村(みたむら)さんなら、昨夜亡くなったよ。もともと癌だったし、脳卒中と心筋梗塞も併発したらしい。泣きっ面に蜂とレショパニーズだな」  向かいのベッドに座っている、白髪の老人がハツラツとした声を出す。薄い水色の作務衣のような入院服を着ている。点滴の管が腕と繋がっているが、あんた本当は元気なんじゃないのか? と訊ねたくなる。  楽な仕事でありがたいが、これは楽過ぎだ。  三田村に、例の件は黙っているようにと乱暴な脅しをかけるのが今回の仕事だったのだが、俺の手が煩わされることはなく終わった。  ところで、だ。 「蜂はわかるが、レショパニーズとはなんだ?」 「寄生虫だよ。蚊が媒介になって、人間に寄生するんだ。卵が孵化したら白血球を食っちまうから、出血が止まらなくて身体が血だらけになるんだとさ。南米では問題になってるらしい」 「それは、おそろしいな」 「入院生活でずっとテレビを見てるから、雑学に詳しくなったんだよ」  老人はにかっと笑ったが、俺は笑う気持ちになれず、改めて真っ白なベッドを見た。     
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