4 お前らは、死ぬ。

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4 お前らは、死ぬ。

 仕事に向かうはずだった三田村の病室の、向かいの病室に入る。  入った瞬間に、病室とは思えない嫌な粘着質のある笑い声が聞こえた。病室には、ベッドが左右に三つずつ並んでいる。右側手前のベッドを見る。金髪の入院服を着ている男子がベッドを四十五度ほど起き上がらせ、横になっていると座っているの中間の姿勢になっている。ベッドの脇に置かれたベンチには、だらしなく制服を着崩した高校生が座っていた。  他の入院患者のことなど気にする様子もなく、大きな声で二人が話している。彼らのベッド以外は、全てカーテンを閉じていて、顔も見たくない、と言うよりコソコソ隠れているように見えた。  コツコツと床を鳴らしながら、ベッドへ近づく。しばらく、彼らのベッドの前に立って様子を窺った。二人とも、三十分ほど前に俺が売店で買って誠に渡した、地元の銘菓を食べている。船の形を模した、カステラ生地の洋菓子だ。 「おい、なんだよお前」  見舞いに来ている方が俺に気づき、怪訝な顔をし、眉間に皺を寄せる。     
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