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3 笑い話にしない?
仕事相手が、病気に殺された。
依頼人の望み通り、秘密が漏れることはなくなったのだから、結果オーライなのだろうか、と考えながら缶コーヒーを口に運ぶ。俺は病室を離れ、廊下の隅っこにある談話室に移動していた。微糖の缶コーヒーなのになんだか甘ったるく、苦い気持ちになる。依頼人に相手が病死していたと報告して、支払いを渋られないかと案じていたら、声をかけられた。
「あなたはどこが悪いの?」
女、と言うにはまだ若く、少女、と呼ぶほど幼くはない若い女が肩にトートバッグを下げ、松葉杖をついて立っていた。
炭酸飲料を口に運び、ぐびぐび飲んでいる。
俺は入院着を着ていないのに、何故声をかけられたのだろうか。仕事絡みか? と警戒する。
「顔色が悪いけど」
「それはもともとだ。悪いのは、運だな」
「それは災難だね」
「仕事で来たんだが、その必要がなくなったんだ。お前は、右足か」
女の右足はギプスで固められていた。
「わたしも運、よ」
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