第1話 拾われうさぎ

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僕の眼は片目だけ紅い。 この国では不吉の象徴だとか言われてる。 1部の熱狂的なコレクターの間では高値で取引を されているらしいが、一般的には忌み嫌われる存在だ。 「では、今回の目玉商品のご紹介です! 呪われた紅い眼を持つこの美しい少年です!!」 ステージの真ん中に檻ごと置かれる。 「なんて美しいんだ!」 「ぜひうちで買いたいものだ」 ザワザワと騒ぎ出す観客。 何百人もいるこの観客達。 こいつらはみんな人間を買いに来ている連中だ。 (あぁ……本当に気持ちわりぃ) いっそ、今すぐ”目が覚めてくれたら”いいのになぁ。 少年は、面倒くさそうに狭い檻の天井を見つめる。 「紅い……眼?」 「あぁ、そう聞こえた」 幼い少女の問いに、男が答えた。 少女は携帯を取り出して電話をかける。 「もしもし縁(ゆかり)?今の聞こえてた?」 「はいはーい。ちょうどお嬢から連絡くるかなって思ってたところです」 優しそうな男の声。 「私たち今日はこの後すぐに上を潰しに行かないといけないから、縁にお願いしてもいい?」 「えぇ、勿論でございます。お嬢様」 お嬢様と呼ばれた少女は電話を切ると立ち上がる。 ステージの真ん中にいる少年をチラッと一目見ると 少女と男は会場を後にする。 「あの子で今日はラストよね?」 「あぁ、そう聞いている」 「……じゃあ、さっさとお仕事終わらせよっか」 ヒラヒラとしたドレスを身に纏う幼い少女は くるりと1周回ってあどけなく笑う。 男はそれを見てため息をひとつ。 「結局やるのは俺だろ」 「当たり前でしょー」 会場からは、大きな悲鳴が漏れていた。
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