29人が本棚に入れています
本棚に追加
幸せという言葉とは縁遠く生きてきた。
僕に家族はいない……。
多分これからも、幸せなんて知らずに
生きていくんだと思っていた。
そう、あの出来事が起こるまでは。
「な、なんて美しいんだ!これはぜひ欲しい」
冷たい鎖に繋がれて、檻の中に入れられて。
金持ちそうな男に僕は品定めされている。
(頭が働かない)
もう3日はまともに食事を取っていない。
空腹で死にそうだ。
これから僕は何かのオークションにかけられるらしい。
1人でフラフラしているところをいきなり襲われ、無理やり檻の中に入れられた。
「美しい顔立ちの上、オッドアイとは珍しい……片目が綺麗な紅色だな。呪われた紅い眼……この眼だけでも相当な額になるぞ」
「このまま飼うも良し。パーツでバラ売りするもよし。どちらでもオススメ出来る今回のイチオシ商品です」
ニヤリと若い男が笑う。
「ワシはあまり紅い眼だとか珍しいパーツには興味ないが、これは本当に美しい。こりゃ奮発せにゃならんな!」
ワッハッハと大声で笑う男の声が酷く耳障りだ。
金持ちの趣味の悪いオヤジはみんな同じ。
美しい、綺麗だと言って高値で僕を買うくせに
躾だと言って鞭を振るう。暴力を振るう。
赤く腫れ、血に濡れた様子に興奮するらしい。
本当に反吐が出る。
あと何日この環境に耐えないといけないのか……。
(早く、檻から出たいなぁ)
自分ではどうしようもないことはわかっている。
ただ、この状況には慣れていた。
この見た目のせいでよく誘拐されてはオークションに出品されている。
そう、今回で出品されるのは”17回目”なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!