第1話 拾われうさぎ

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幸せという言葉とは縁遠く生きてきた。 僕に家族はいない……。 多分これからも、幸せなんて知らずに 生きていくんだと思っていた。 そう、あの出来事が起こるまでは。 「な、なんて美しいんだ!これはぜひ欲しい」 冷たい鎖に繋がれて、檻の中に入れられて。 金持ちそうな男に僕は品定めされている。 (頭が働かない) もう3日はまともに食事を取っていない。 空腹で死にそうだ。 これから僕は何かのオークションにかけられるらしい。 1人でフラフラしているところをいきなり襲われ、無理やり檻の中に入れられた。 「美しい顔立ちの上、オッドアイとは珍しい……片目が綺麗な紅色だな。呪われた紅い眼……この眼だけでも相当な額になるぞ」 「このまま飼うも良し。パーツでバラ売りするもよし。どちらでもオススメ出来る今回のイチオシ商品です」 ニヤリと若い男が笑う。 「ワシはあまり紅い眼だとか珍しいパーツには興味ないが、これは本当に美しい。こりゃ奮発せにゃならんな!」 ワッハッハと大声で笑う男の声が酷く耳障りだ。 金持ちの趣味の悪いオヤジはみんな同じ。 美しい、綺麗だと言って高値で僕を買うくせに 躾だと言って鞭を振るう。暴力を振るう。 赤く腫れ、血に濡れた様子に興奮するらしい。 本当に反吐が出る。 あと何日この環境に耐えないといけないのか……。 (早く、檻から出たいなぁ) 自分ではどうしようもないことはわかっている。 ただ、この状況には慣れていた。 この見た目のせいでよく誘拐されてはオークションに出品されている。 そう、今回で出品されるのは”17回目”なのだ。
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