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「う、うわぁぉぁぁああああ!!!」
何が起こっているのか、全く僕には理解できない。
いきなり会場は暗くなり、何やら薄い霧の様なものが
漂っている。
そしてあちこちから聞こえる叫び声。
「や、やめろぉぉぉ!!」
「何なんだ!いったい何が起こっているんだ!!」
動けない僕は、ただただ悲鳴を聞くことしか出来ない。
目が暗さに慣れてきたといえど、場内で何が起きているのかは霞がかっていてハッキリ見えない。
「こーんばーんは。赤い眼の子うさぎさーん」
「!?!?」
突然、檻の上部がなくなった。
鉄の檻が、スパッと斬られたようだった。
目の前に現れたのは
眼鏡をかけたキリッとした雰囲気の日本刀を持つ男と
へらへらと笑う優しい雰囲気の銀髪の男だった。
「せっかくだからついでに君を助けてあげる」
銀髪の男が手を差し出す。
「俺の名前は南雲 縁(なくも ゆかり)。探偵さ」
「た……探偵?」
「やめろ」
「んげふっ!!!」
日本刀の男が凄い勢いで縁という男の頭を殴る。
「いきなり探偵だとか言われても怪しいだけでしょう!とりあえず今はここから出るのが先です!」
「だってよく漫画でもあるじゃん!名前を名乗って「探偵さ」キラッみたいなシーン!!俺もアレがやりたいのー!」
「わかりました、わかりましたから!とりあえず先を急ぎましょう!君も立てるかな?」
今度は日本刀の男が手を差し出す。
僕は頭の処理が追いつかず混乱してしまう。
「ほら!怪しがって少年がついてきてくれないじゃないですかぁ!」
「それは俺のせいじゃなくて龍暉(たつき)くんが、怖いんじゃないの~?いきなり人を殴るような人だしぃ」
同じ場所にいるのに、先程までの胸くそ悪い空気は消えていた
なんだかこの2人を見ていると笑えてきた。
「ふっふふ……」
「「あ、笑った」」
今はまで無表情だった少年の顔が緩む。
「僕の名前は卯月光(うづきひかる)です。僕を、助けてください」
そう言って龍暉と呼ばれた男の手を握る。
後ろではまだ大混乱が起きているというのに
今までで一番和やかな空気を感じたように思えた。
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