第1話 拾われうさぎ

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「う、うわぁぉぁぁああああ!!!」 何が起こっているのか、全く僕には理解できない。 いきなり会場は暗くなり、何やら薄い霧の様なものが 漂っている。 そしてあちこちから聞こえる叫び声。 「や、やめろぉぉぉ!!」 「何なんだ!いったい何が起こっているんだ!!」 動けない僕は、ただただ悲鳴を聞くことしか出来ない。 目が暗さに慣れてきたといえど、場内で何が起きているのかは霞がかっていてハッキリ見えない。 「こーんばーんは。赤い眼の子うさぎさーん」 「!?!?」 突然、檻の上部がなくなった。 鉄の檻が、スパッと斬られたようだった。 目の前に現れたのは 眼鏡をかけたキリッとした雰囲気の日本刀を持つ男と へらへらと笑う優しい雰囲気の銀髪の男だった。 「せっかくだからついでに君を助けてあげる」 銀髪の男が手を差し出す。 「俺の名前は南雲 縁(なくも ゆかり)。探偵さ」 「た……探偵?」 「やめろ」 「んげふっ!!!」 日本刀の男が凄い勢いで縁という男の頭を殴る。 「いきなり探偵だとか言われても怪しいだけでしょう!とりあえず今はここから出るのが先です!」 「だってよく漫画でもあるじゃん!名前を名乗って「探偵さ」キラッみたいなシーン!!俺もアレがやりたいのー!」 「わかりました、わかりましたから!とりあえず先を急ぎましょう!君も立てるかな?」 今度は日本刀の男が手を差し出す。 僕は頭の処理が追いつかず混乱してしまう。 「ほら!怪しがって少年がついてきてくれないじゃないですかぁ!」 「それは俺のせいじゃなくて龍暉(たつき)くんが、怖いんじゃないの~?いきなり人を殴るような人だしぃ」 同じ場所にいるのに、先程までの胸くそ悪い空気は消えていた なんだかこの2人を見ていると笑えてきた。 「ふっふふ……」 「「あ、笑った」」 今はまで無表情だった少年の顔が緩む。 「僕の名前は卯月光(うづきひかる)です。僕を、助けてください」 そう言って龍暉と呼ばれた男の手を握る。 後ろではまだ大混乱が起きているというのに 今までで一番和やかな空気を感じたように思えた。
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