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「一夜!お疲れさんっ」
3人は会場の外に停めてある車に駆け寄る。
後部座席には、既に1人の黒髪の男の子が乗っていた。
「……遅い」
一夜と呼ばれた男の子はジロリと僕を睨む。
「誰それ……」
「んーとね。拾ってきた☆」
「……あっそ」
縁の高いテンションとは真逆で、冷たくあしらう。
「卯月さん、助手席に乗ってください!移動します!」
「あ、わかりました」
龍暉に誘導されて、素直に車の助手席に乗り込む。
「じゃあ無事一段落したし、帰りましょー!」
「たまには縁さんが運転してくださいよ」
「疲れるから嫌だ!」
既に後部座席に座る縁を見て、龍暉は呆れながら運転席に乗り込んだ。
「1時間半くらいかかるから、寝ててもいいよ」
「……いや、さすがに」
知らない人の車に乗って、いきなり寝るなんてことは出来ない。
油断させておいて、寝た瞬間また知らない所に連れていかれて
売られる可能性だってある。
ぐぅぅぅっ
「あっ……」
「ぷっ……ははは!そっか、先にご飯だよね。
少し寄り道しても怒られないですよね?」
「いいと思うよー。俺もお腹空いたし!」
「じゃあ一言帰りが遅れることを社長に伝えといてください。近くのご飯屋さんいきます」
さっきまで混乱して忘れていたが、ここ数日ろくに食事を摂っていなかった。とりあえず空腹が酷く、眠れそうにない。
「何が食べたいとかある?」
「え、えっと……そんな、特には」
「じゃあ適当なとこに行きますか」
車はどんどん街中に進んでいく。
(勢いに任せてついて来ちゃったけど……大丈夫かな)
オークション会場から逃げ出せたのは良かったが、この状況が良いのか悪いのかはまだ判断出来ない。
一見いい人そうに見えるが、いい人のフリをして騙してきた奴らだって今までいくらでもいた。
(どっちにしろ、同じ場所に長居は出来ない)
今まで何度も、この人は違う。
この人だけは味方かもしれないと信じては裏切られてきたか。
人の笑顔が怖い。
僕のことを知れば、みんな逃げ出す。
(近寄るんじゃねぇ!)
(ば、化け物!!!!!)
淡い期待なんかしちゃいけない。
僕は”呪われた紅い眼”を持つ男なんだから。
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