第1話 拾われうさぎ

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「一夜!お疲れさんっ」 3人は会場の外に停めてある車に駆け寄る。 後部座席には、既に1人の黒髪の男の子が乗っていた。 「……遅い」 一夜と呼ばれた男の子はジロリと僕を睨む。 「誰それ……」 「んーとね。拾ってきた☆」 「……あっそ」 縁の高いテンションとは真逆で、冷たくあしらう。 「卯月さん、助手席に乗ってください!移動します!」 「あ、わかりました」 龍暉に誘導されて、素直に車の助手席に乗り込む。 「じゃあ無事一段落したし、帰りましょー!」 「たまには縁さんが運転してくださいよ」 「疲れるから嫌だ!」 既に後部座席に座る縁を見て、龍暉は呆れながら運転席に乗り込んだ。 「1時間半くらいかかるから、寝ててもいいよ」 「……いや、さすがに」 知らない人の車に乗って、いきなり寝るなんてことは出来ない。 油断させておいて、寝た瞬間また知らない所に連れていかれて 売られる可能性だってある。 ぐぅぅぅっ 「あっ……」 「ぷっ……ははは!そっか、先にご飯だよね。 少し寄り道しても怒られないですよね?」 「いいと思うよー。俺もお腹空いたし!」 「じゃあ一言帰りが遅れることを社長に伝えといてください。近くのご飯屋さんいきます」 さっきまで混乱して忘れていたが、ここ数日ろくに食事を摂っていなかった。とりあえず空腹が酷く、眠れそうにない。 「何が食べたいとかある?」 「え、えっと……そんな、特には」 「じゃあ適当なとこに行きますか」 車はどんどん街中に進んでいく。 (勢いに任せてついて来ちゃったけど……大丈夫かな) オークション会場から逃げ出せたのは良かったが、この状況が良いのか悪いのかはまだ判断出来ない。 一見いい人そうに見えるが、いい人のフリをして騙してきた奴らだって今までいくらでもいた。 (どっちにしろ、同じ場所に長居は出来ない) 今まで何度も、この人は違う。 この人だけは味方かもしれないと信じては裏切られてきたか。 人の笑顔が怖い。 僕のことを知れば、みんな逃げ出す。 (近寄るんじゃねぇ!) (ば、化け物!!!!!) 淡い期待なんかしちゃいけない。 僕は”呪われた紅い眼”を持つ男なんだから。
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