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「何が食べたい ?好きな物はある?遠慮せず好きな物を食べていいからね」
ファミレスに着いた4人はメニューを開く。
「好きな……食べ物?」
メニューを見る。
しかし、正直そのメニューにある食べ物は
ほとんど食べたことがないものだった。
「…………金平糖?」
首を傾げながら答える光。
「え!?甘いものがよかった?意外とお腹すいてない?」
予想外の答えに龍暉は慌てる。
「……ごめん。メニュー読めないし、写真にある食べ物を食べたことがないからよく分からない」
ずっと山奥で過ごすか、金持ちの家で家畜のように過ごすかの2択だった光にとって、初めての外食だった。
「え、えぇ~……卯月さんっていくつ?」
「16」
龍暉もあわあわするしかなかった。
ずっと無表情だった一夜も少し目を見開く。
「じゃあさ、俺と一緒のハンバーグ食べよっか?」
縁がメニューを指さす。
「ハンバーグ?」
「そう。ハンバーグ!俺のイチオシだよん」
「じゃあ、それで」
縁の笑顔は安心する。
慌てたり、引いたりせず、受け入れてくれる笑顔。
「お、美味しい!」
初めて食べたハンバーグは、今までの食事の中で
1番美味しく感じた。
「ちょ、そんなに急いで食べなくても誰も取らないから大丈夫だよ。もっとゆっくり食べなさい」
「16ならまだまだ成長期!たーんとお食べ」
ガツガツ食べる光を心配そうに見ている龍暉をよそに、縁は笑いながら自分の分のハンバーグも切り分けて、光のお皿に乗せた。
「ぷはーっ食った食った!」
ぽんぽんと満足そうにお腹を撫でる光。
「何か、卯月くん第一印象と少し違うね」
中性的な美しい顔立ちからは、少し想像し難い豪快さだった。
「さーて、そろそろ帰りますかね」
縁が伝票を持って立ち上がる。
「……そう言えば聞き忘れてたんだけど、僕は今からどこに連れていかれるの?」
「俺達の職場だよ」
そう言ってレジに向かう。
「職場?」
「もう、そんな中途半端な説明じゃ卯月さんが不安になっちゃうじゃないですか!あ、別に怪しい会社じゃないですからね!とっても楽しい会社です!」
「余計に怪しい」
ズバッと一夜が言う。
「あ!僕、逃げたりしないんで……とりあえず行きましょ!」
落ち込む龍暉の背中を押して店を出た。
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