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「えす、えー、あーるたんていじむしょ?」
ごく普通の一軒家の入口に看板があった。
「ようこそ、ここが自分達の職場。SAR探偵事務所です!」
入った瞬間、たくさんのクラッカーがパーンと鳴り響く。
小さい女の子から大人まで色んな人が出迎えてくれた。
「初めまして、SAR探偵事務所の所長をしております神志名 成春(かしな しげはる)と言います。よろしくね」
小さめの丸いサングラスをかけた長髪の男が出てきた。
正直胡散臭い雰囲気がする。
「胡散臭そうに見えるけど、とっても優しい人だから仲良くしてあげてね!」
「え、あ……えっと、卯月 光です。よろしくお願いします」
縁の声にハッとして、慌てて自己紹介をする。
(ていうか、何をよろしくするんだろう)
「あぁ……本当に左だけが紅い色をしているんだね」
長めの前髪をかき分けて、紅い眼を見つめる。
(ゾワッ)
鳥肌が立つ。
微笑んでいるのに、恐怖を感じた。
汗が噴き出る。
「ぷぷぷー!社長めっちゃ怖がられてるぅ!」
可愛らしい丈の短い着物を着た女の子が笑う。
隣で縁も爆笑していた。
「その人相の悪さどうにかしてくれないと、新人が来る度に大変じゃーん!」
「そ、そうか……どうしても相手の子を怖がらせてしまう……悪気は無いんだが……すまない。許してくれ」
いきなりしゅんっと落ち込む神志名。
「ていうか……ん?新人??」
光は女の子の顔を見つめる。
「え?違うの?」
「あー、今回はどさくさに紛れて拾ってきただけで、まだ細かい話はしてないんだよね☆」
「ハァー!?アンタそれでよくここまでついてきたね?こんなおっさんにノコノコ事情も分からないままついて行っちゃダメよ!!」
(ご、ごもっとも……)
「私たちはね、少し特殊な仕事をしていてね。ぜひ光くんにもその仕事を手伝ってほしいんだ」
「え?仕事??」
「そう。是非うちの会社で君を雇いんだけど……」
「僕……仕事なんて何も出来ないよ?」
まともな仕事なんて、生まれてきて16年。
1度もやったことがない。
「いや、君だから出来る仕事なんだよ」
怪しい。
今までそんなこと言う人はいなかった。
やっぱり僕を売る気なんだ。
光は1歩後ずさる。
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