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ゾワゾワする……。
(あぁ、今日はあの日だ)
逃げよう。
どっちにしろ、このままじゃここにいる全員を殺してしまうかもしれない。
「グルルルルルッ……」
光は両手を床についた。
僕は何日か周期的に、狼になる。
これは自分では止められない。
狼になれば、理性を失う。
今までこの牙で、何人の金持ちの共を噛み殺して来たか。
売られたあと、遊ばれていつ殺されてもおかしくない僕が
今はまで17回売られても毎回逃げ出せた理由。
「え、何何?様子がおかしくない!?」
「ほう……光くんの能力は、「狼」かな」
落ち着いた様子で神志名は呟く。
光の爪が鋭く尖り、狼のような鋭い歯。
そして耳も生えてきた。
「義貴(よしたか)」
少女を片手に抱えた男が前に出てくる。
義貴は、興奮した様子の光の額に触れた。
「グルルッ……ぐ、グルッ………………あれ?」
狼化が……解けた?
「とりあえず落ち着こうか」
「な、何しやがった……」
光は信じられないという表情で神志名を見た。
「これが義貴……黒崎 義貴(くろさき よしたか)の能力さ」
「能力……?何だそれ」
「光くんが「狼」の能力を持つように、世の中にはあらゆる能力をもつ人間がいるんだよ」
言われている意味が分からない。
「この狼化は……俺でも止められない!それが、俺のデコを触ったくらいで何故!!!」
「……光くん。その能力はちゃんと訓練をすればコントロール出来る能力だよ。私たちは、こういった特殊な能力で困っている人たちを助ける仕事をしているんだ」
「特殊能力な能力で困っている人を……助ける?」
黒崎に抱えられていた少女が降りて、光の前に立つ。
小さな女の子なのに、存在感がすごい。
「貴方の能力の使い方、教えてあげるわ。
その代わり、貴方の能力をうちの為に使いなさい」
何か理解ができた訳では無い。
納得をした訳でもない。
ただ、その少女から差し出された手は握らなければならない。
断っちゃいけない。
そんな気がした。
「美桜様から教えてもらえるなんて羨ましいです!」
「何言ってんの教えるのは貴方よ」
「え!自分ですか!?」
龍暉は予想外の言葉に慌てる。
「貴方が適任でしょ?」
握ったその手は、幼い女の子にしては
冷たい手をしていた。
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