16人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
目的地まで後五分というところで、大津くんの目が覚めた。
私に身を任せて眠っていたことに気づいても、特に動揺もしていないみたいだった。
「ごめん、全然わからなくて。頭起こしてくれてよかったのに」
前髪に、少しだけ寝癖がついている。
「大津くん、ぐっすり寝てたから」
「悪い。重かっただろ」
「ううん」
起こすのがかわいそうだと思ったのも事実だけど、本当はずっとこのままいたかったんだ。だって、私……。
「帰りは加藤がオレを枕にしていいからな」
絶対に冗談で言っているってわかってるのに。
それに、安眠とはほど遠いそんな枕、使う度胸もないくせに、私の心臓はいちいち反応するから面倒くさい。
「はい、じゃあそろそろ国立公園に着くから、降りる準備をするように」
白石先生のアナウンスが、一気に現実へ引き戻す。
私も大津くんも、何事もなかったように大きく伸びをした。
最初のコメントを投稿しよう!